フェラン・アドリアとジュリ・ソレールが経営するレストラン。フェラン・アドリアは現代の最も独創的なシェフと評された。レストラン「エル・ブリ」は、その革新的な料理によって世界的に有名になり、予約希望者が殺到している。これまでに世界のベストレストランを選ぶサンペグリノ後援の「世界のベスト・レストラン50」で過去5回、世界第一位に選ばれている。
初代オーナー、ハンス・シリングとマルケッタ・シリング夫妻が名付けたもので、彼らの愛犬のフレンチ・ブルドッグを「ブリ」と呼ぶことから名付けられた。彫像、イラストなどお店の至るところに「ブリ」モチーフのものが飾られている。
スペイン北東部カタルーニャ地方にあるジローナ県ロサスにあるコスタ・ブラバのモンジョイ湾の入り江にあり、バルセロナから高速で1時間半の距離(およそ東京〜熱海間と同じ距離。ちなみにバルセロナにある研究用アトリエは、ローマ時代からの旧市街にあり内部を改装したもの)。
独創的な料理を提供し続けるため、半年のみ(4〜10月まで)営業して、残りの半年間は新しいメニューの開発に勤しんでいる。ただ、この映画が扱っている2009年は、エル・ブリが初めて7月から12月まで営業した年。キノコなど秋冬の食材を扱うため、フェランたちもいつにない緊張があった年である。
三ツ星★★★
約8000人。(約50人/日 x 160日/シーズン)
約200万件
時期にもよるが、約60~70人。つまり、客の数を上回っている。そして、デンマークのレストラン「ノーマ」のレネ・レゼピ、スペインのジローナにある「エル・セジェール・デ・カンロカ」のジョアン・ロカをはじめとした、現在世界トップ20の料理人のうち、半数がエル・ブリで働いていた経験がある。その誰もが「エル・ブリで開かれた勉強会が、自分の目を開かせてくれた瞬間だ」と語るほど、多くのものを得て巣立っていく。
料理はアラカルトではなく、全てコース料理として決まっている。その品数はとても多く、40皿以上に及ぶこともある。毎シーズン、メニューを一新するので同じ料理は二度と提供されない。またお客は最初に厨房に案内され、見学してから食事を愉しみ、食後に厨房で別れの挨拶をするのが、エル・ブリ流のおもてなし。
「クリエイティブとは、真似をしないこと」。フェランと彼のチームは、フランスの天才シェフ、ジャック・マキシマンのこの格言を日々の研究におけるモットーにしている。
本作の中でも、フェランがスタッフに対して、いかに迅速にサーブするかが大事であることを説いている。日本人にとっては当たり前のように感じられるが、もともとおおらかでのんびりとした土地柄のスペインにおいて、こうした迅速さを求めるのはあり得ないと言っても良いほど。
料理にあうベストな食器で提供するため、様々な形や色、質感のお皿がある。これらは、アトリエそばにある工房兼事務所で試作されている。
映画の中でも登場して驚くのは、まな板が真っ赤な色をしていること。日本では見慣れない色だが、スペインではこの赤いまな板が一般的なのだ。
エル・ブリの研究用アトリエといえば、スパイスが整然と並べられた棚が有名。これはフェランが料理のアイディアを湧かせるために陳列したもの。今や、世界各国のシェフズ・テーブルにはスパイスの棚が置かれている。
どんな食材も簡単に“泡”に変身させる調理法、エスプーマ。フェランが開発したことで一躍有名になった。今では西洋料理のみならず、カフェや日本料理など様々な場所で応用されている。
2011年7月、惜しまれつつレストランとして閉店したエル・ブリだが、2年後に料理研究財団として新たに生まれ変わる。これまでの料理のアーカイブや、新作料理や新食材の開発を行うことが発表されており、エル・ブリの進化はとどまるところをしらない。