芸術の都ウィーンが誇る“偉大なる美術館”-ウィーン美術史美術館。
そこで繰り広げられる、誰も見たことがない“美の裏側”
645年間君臨したハプスブルク家の歴代皇帝たちが蒐集した膨大な数の美術品を所蔵し、今年で創立125周年を迎えたウィーン美術史美術館。収蔵作品は、クラーナハ、フェルメール、カラヴァッジオ、ベラスケスなどの名画から絢爛豪華な美術工芸品まで多種多彩。なかでも傑作
「バベルの塔」をはじめとしたブリューゲル・コレクションは世界最多を誇る。創立120年の節目に当たる2012年からスタートした大規模な改装工事に2年以上にわたり密着した製作陣は、ナレーションやインタヴュー、音楽を一切排したダイレクトシネマの手法を用いて撮影。豪奢な天井画や壁画などまるで宮殿のような豪華な装飾とともに、改装工事の様子、美術品の収蔵庫、修復作業場、閉館後の館内や会議室など、ふだん見ることのできない美術館の姿をとらえていく。“偉大なる美術館”の裏側とそこで働く人々の姿を丁寧に描いた、芸術の世界をたっぷりと堪能できるドキュメンタリー映画
世紀を超え、守り続ける。
名門一族の美術品(インペリアル)を継承する美術館に課せられた創立120周年目のミッション
館長、学芸員、修復家、美術史家、運搬係、清掃員。個性的なスタッフたちがつむぐ小さなドラマは、組織のなかで働く苦労や、芸術を扱う仕事が持つ困難さを切実に描き出す。美術館のブランド戦略をめぐって紛糾する会議。収支バランスを問うてばかりの経営陣。下っ端扱いを嘆くサービス係。完璧主義の修復家。芸術とビジネスとが同居する場で巻き起こるのは、どれも普遍的でありながらユニークな問題ばかり。なかでも「伝統の継承」と「大胆な革新」という正反対の選択を迫られる姿は興味深い。ハプスブルク家の遺産を守る美術館は、中世からの伝統を継承しつつ、現代の観客に向けて新たな風を吹き込まなくてはいけないのだ。歴史の重圧のなかで、どのようにして現代的で革新的な展示を成功させるのか。過去の偉大な遺産をいかにして未来へとつなげていくのか。悩みながらもそれぞれの仕事に誠実に対処するスタッフたちのストーリーは、ときにユーモアあふれる展開やあっと驚く感動的な瞬間をもたらしてくれる。

- 第64回ベルリン国際映画祭 カリガリ賞受賞
- オーストリアDiagonale編集&撮影賞受賞