監督インタヴュー

Q1:まず、この作品を作ろうと思った動機を教えて下さい。

助監督として現場に付いていた頃から、いつか記録に残したいと思っていました。それは代々木監督がSEXをとてもポジティヴに考えている事と、撮影の現場で、SEXをする事によって女性の表情がガラリと変わっていく様子がとてもドラマチックだと思ったんです。そしてそこに至るまでの代々木監督の演出がとても高度なもので、こんなすごい事が出来る人は他にはいないな、と思ったからです。

Q2:その企画を実際に作品にしようと動き始めたのはいつ頃ですか?

3年位前です。初期の日活作品を撮っていた頃の関係者がもうご高齢で、今やらなければその頃について語れる方がいなくなってしまうので、それは日本の映画史にとっても大きな損失になると思ったからです。 ※編注:本編でインタビューを受けている元日活プロデューサー奥村幸士と元プリマ企画社長藤村政治は本作の完成前後に亡くなっている。

Q3:撮影開始から完成に至るまでの経緯を簡単に教えて下さい。

2年半前からまず代々木監督のインタビューを時間軸に沿って撮り始めて、それから約1年間かけて周囲の人たち、最後に奥さんのインタビューを撮って、全部で70時間は収録しました。その間に並行して挿入する映像の権利をクリアして、1年半位前から取材をしながら編集を始めました。最初に大まかな構成は想定していたんですが、実際にその通りに繋いでみてもあまり面白くなかったので、それから色々と試行錯誤を繰り返して、最終的には今年の9月に編集を終えて、音楽を入れて完成しました。

Q4: 本作を完成させる上で、どんな点で苦労しましたか?

まず映像使用の許可を得るのが大変でした。特に女優さんたちの中には連絡先もわからない人も大勢いましたからね。最終的にアテナ映像さんのご協力もいただいて、大半の映像は何とかクリアする事ができました。でもそれ以上に大変だったのは、奥さんのインタビューの許可を得ることです。当初は「インタビューを受ける位なら代々木と離婚する」とまでおっしゃって、「それじゃぁ僕もやめる」って代々木監督まで同調するので、とりあえず奥さん以外の人たちの取材を重ねていきました。そして最後に奥さんが残ったところで、私が長い手紙を書いて読んでもらい、やっとインタビューを受けていただける事になりました。撮影後も編集で苦労しました。多分50回はつなぎ直しましたかね。最後の頃は自分で判断が出来なくなりまして、まったくAVの知識のない人たちにも見てもらって、その人たちの意見も参考にしました。

Q5:石岡監督ご自身、最初の“代々木体験”はいつの事で、どんな印象でしたか?

劇場で「ザ・オナニー」を観たのが最初ですが、世の中にこんなにエロいモノが存在するのかと驚きました。それと劇場内の雰囲気が他の作品とは全然違ったんです。いつもは客もまばらで煙草を吸いながら観てる人もいるんですが、この時は満席でみんなが固唾を飲んでジッと見つめているのが伝わってきました。

Q6:石岡監督が考える、代々木作品の本質は何だと思いますか?

様々な仕掛けを施して虚実をないまぜにする事によって、人間の感情を極限まで追い込み、その人の本音や本質を炙り出してゆく事です。例えば初期の「ザ・面接」シリーズだと普通にみんなが仕事をしているオフィスの横でSEXを始めたりする。第三者、特に同性に見られる事でいつもと違う感情を呼び覚まされたりするんですよ。そういったハードルの設定の仕方が本当に上手いんです。それに代々木監督は業界中で一番女優に対する事前の面接が長いんです。数回にわたって長時間行い、その女優に関する様々な情報を自分の中にインプットして、その情報をもとに現場で臨機応変に言葉攻めにするんです。それと自分で撮るようになってからの代々木監督のカメラは本当に凄いですよ。言葉にしなくてもカメラの動きに合わせて人が動いたりするんです。カメラが演出してるって言うんですかね。長回しなのに無駄なカットがないですし、まるでカメラが女優と現場と一体になって呼吸しているみたいなんです。

Q7:石岡監督にとって“代々木忠”とはどんな存在ですか?

本人はそんなつもりはなかったと思いますが、僕にとっては映画を教えてくれた、なくてはならない人です。