伝説

代々木忠伝説

構成や時間の都合で惜しくも本編からはカットされてしまったインタビューの中には、代々木忠の強烈な個性を物語るエピソードも多い。
ここではそんなエピソードをいくつか紹介します。

封印された小倉時代

札付きの不良から極道へと進んだ小倉時代の事も、実際に現地で取材を行いインタビューも撮っていたが、そのほとんどが公にはできないような内容だったという。本編ではその一端が伺えるエピソードを代々木自身が語っている。

代々木学校

通常AV業界では人気女優を重宝するものだ。しかし代々木作品では男優をフィーチャーした作品も多いため男優との付き合いの方が長く、女優は作品ごとに入れ替わってゆく事が多い。そして本編でも加藤鷹が「代々木監督の現場は俺にとって修行だった」と語っているように、男優陣は代々木忠作品に出演すると一皮むけて一人前の男優に成長すると言われ、男優仲間や俳優事務所の間では“代々木学校”と呼ばれていた。

最後の花道

通常のAV作品は消費者が抜くためだけの即物的なSEX描写が多いが、代々木忠は出演者の内面からオーガズムを追及している。そのため本編でも栗原早記が「代々木さんの現場に行くと、終わって何かがつかめたような気がした瞬間、(その場にいる)みんなの体と混ざったような気がする」と語っているように、代々木作品に出演した女優(素人の場合も多いのだが)は大きな満足感を得られる事が多い。一時期、引退を決めた人気女優の所属事務所は、最後の方の作品を代々木監督に依頼して「ご苦労さま」の意味を込めて、引退前にSEXの大切さや女の本当の幸せを感じさせてあげるという事がよくあったという。樹まり子、林由美香、豊丸などもそんな女優たちだ。

アジアのエリートとAV

代々木作品には文化人の中にも信望者が多く、ある日、代々木は香港大学で日本文化を研究している王向華教授の依頼で、日本の現代文化の中の「性」についての講義を香港大学で行った。香港大学はイギリスの教育情報会社による2009年版「アジア大学ランキング」で1位にランキングされた(以下2位:香港中文大学、3位:東京大学と続く)エリート中のエリートが集う大学で、社会人類学者である王教授はオックスフォード大学で博士号を取り、香港大学の文学院学院長を務めている。そんなアカデミックな人々が集う教室で、代々木は自分の作品を学生たちに見せて熱弁をふるった。最初は教室に響き渡る“喘ぎ声”に戸惑っていた学生たちも、「オーガズムを体験すれば人生までもが変わる」という代々木の言葉に興味津々で、最後は活発なQ&Aが交わされた。

大阪の夜

“本番女優”として大人気になった愛染恭子だったが、本人はそれを嫌ってもうビデオには出たくないと事務所(アクトレス)の社長である代々木に訴えた。そこで代々木は今後も愛染恭子という名前で稼げるようにとストリップの仕事を紹介する。しかし大阪十三のストリップ劇場での初興行のまさに初日、公然わいせつ罪で警察の摘発を受けてしまう。愛染が数日間拘留されている間に、海外ロケ中だった代々木はすぐに帰国し、釈放される日に近くのホテルのスィートルームを予約して愛染を出迎えた。そして「ご心配おかけしました」と謝る愛染の目の前にブ厚い札束を置いて「ご苦労さま。これで下のショッピングモールで何でも買いなさい」と労をねぎらった。ところがこの言葉に対して愛染は「そんな事は結構ですから明日からまた十三ミュージックに戻して下さい。せめて残された日程だけでも踊らせて下さい」と答えてプロ根性を見せた。蛇足ながら愛染のストリップ復帰初日には、テレビ朝日の深夜番組「トゥナイト」で取材に来ていた山本晋也監督(山本は代々木プロデュースで愛染主演作を数本撮っている)が場内を大いに盛り上げて、感動的な夜だったという。これはどちらかと言えば「愛染恭子伝説」と言うべきか…。