Column コラム「脱北とは」

増加する脱北者、韓国に暮らす数は2万人以上

かつては政治亡命がほとんどだった脱北者だが、北朝鮮の大飢饉が報道された1995年頃から、深刻な食糧難や生活苦から脱北する人が増加している。韓国に暮らす脱北者は年々増え、2007年に1万人を超え、2011年11月の時点で23,100人にも達した。脱北者の人権を訴えて、政治家を目指し選挙に出馬する者もあらわれているが、その多くは厳しい生活を余儀なくされている。

脱北者が韓国にやってくると……

脱北者は、まず京畿道にある中央合同尋問センターに収容され、長期間にわたって尋問を受ける。家族について、脱北の理由、脱出ルートなど、生い立ちから脱北にいたるまでの過程をすべて話さなくてはならない。それが終わると、同じく京畿道の「ハナ院」という施設で最低3か月間は韓国での生活に適応するための訓練を受ける。訓練中に社会見学にも出かけ、韓国社会に溶け込むための実地訓練も行う。また就職のための職業訓練もある。ハナ院での訓練終了後、いよいよ社会に出るが、2年間は、「身辺安全」と称して地元警察によって保護される。『ムサン日記〜白い犬』に登場しているパク刑事のように、保安局の刑事が生活指導、職業の斡旋にいたるまで生活の面倒をみてくれるのだが、中には「監視されている」と不満を持つ脱北者も多い。

住民登録番号125番

住民登録番号とは、韓国籍をもつ者に対して出生時に与えられる13桁の識別番号。国民の日常生活に不可欠で、さまざまな手続きの本人確認手段として使われている。脱北者の住民登録番号は、男性は 125 から、女性は 225 から始まる番号で統一され、番号だけで脱北者であることがわかってしまうため、スンチョルのように就職差別などを受けることが多い。

ムサンって、どんなところ?

北朝鮮と中国の国境の街で、漢字では「茂山」と書く。脱北者の多くが、まずムサンを目指し、川幅が狭く冬には凍結する豆満江という川を渡って中国に入り、中国から韓国へ入る。そのためムサンには、脱北者を取り締まる国境警備隊が配置され、実弾を常時携帯している兵士が警備にあたっている。取り締まりは非常に厳しく、「怪しい人間が通ると捕まえてパンツの中まで調べる」と言われるほど。

Twitter Facebook Tweet