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その髪を切るとき、彼は何を失うのだろう。

中国との国境に接する北朝鮮の街ムサンからやって来た青年スンチョル。国境を越え、韓国に来たものの、脱北仲間のギョンチョルと借りた安アパートでの暮らしは、スンチョルにとって北での暮らしと代わり映えするものでなかった。

一方、ギョンチョルは韓国での暮らしにすぐさま順応し、危ない仕事に手を出して稼いでいる。いつまでも、おかしなおかっぱ頭に、ダサい服、いかにも北から来ましたという風貌で、雀の涙ほどのバイト代のポスター貼りを不器用につづけるスンチョルのことがギョンチョルは歯がゆくてならない。

真面目に定職を探しても、「125」から始まる住民登録番号で脱北者であることがばれてしまい、すぐに断られてしまうスンチョル。そんなスンチョルにとって唯一の心の拠りどころは教会だった。そして、白い制服を着て歌う聖歌隊のメンバーである美しい女性スギョンに密かに憧れるが、近づくこともできない。

ある日、スンチョルは、捨てられた白い犬を拾う。たいした金も稼げないくせに、犬を飼うなんてとギョンチョルはスンチョルに苛立つ。スンチョルは、白い犬に「ペック(韓国語で白い犬の意味)」と名付け、心を通わせるが、必死に生きようともがく彼の前に容赦なく厳しい現実が訪れる……。

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