“ヨヨチュウ”こと代々木忠監督は、80年代初頭のAV黎明期以来、愛染恭子の本番シリーズや「ザ・オナニー」シリーズなど数々のヒット作/問題作を連発し、世界に衝撃を与えてきた。そして72歳になった今も新たな作品を撮り続けている。
彼が手掛けた数々の作品は単なるAVの枠を超え、心理学や社会学、生物学そして精神医学の観点からも語られ、AVという男性主体のマーケットにおいて、女性やフェミニストを含む多くの識者からも高い評価を得ている。そして彼がそんな様々な分野にわたる試行錯誤を繰り返す最終的な目的は、「人はどうしたら幸せになれるか?」という永遠の課題を実現する事だ。
戦後の邦画裏面史とも言える性産業の世界を牽引した偉大なカリスマは、ひとりの夫でもあり父親でもあった。世間との軋轢、多額の借金、家族との確執…。本作はそんな彼が送ってきた数奇な人生と作品世界、そして作品の中に込められた普遍的なメッセージを、愛染恭子、加藤鷹、村西とおる、高橋がなりなどのピンク映画~AV界の周辺人物から、笑福亭鶴瓶(落語家)、槇村さとる(漫画家)和田秀樹(精神科医)など、彼の作品、著作本を評価している著名人までの幅広い証言をもとに、一つ一つ丁寧に紐解いてゆく。
また代々木忠という一人の人間に鋭く肉迫していくと同時に、そこには彼が辿り共に歩んできた時代が投影され、性産業の流れを検証するとともに、人間の性と愛を心の内側から切り取って赤裸々に提示する。
本作の監督は、83年から6年間、代々木作品が最も革新的だった時期にその右腕として過ごし、代々木忠とその作品の隅々までを知り尽くした石岡正人が、そして音楽は多くの代々木監督作品でも楽曲を提供している後藤英雄が担当している。また「プロジェクトX」の田口トモロヲが映画では初めてナレーションに挑戦し、題字は自ら「代々木監督のファン」だと語るリリー・フランキーが担当している。
なお本作は第5回ローマ国際映画祭のEXTRA部門のコンペティションに正式出品されている。
愛とは何か? SEXとは何か? AVを撮りながら愛を問い続け、心までも裸にしてその答を炙り出した男。その波乱にみちた人生を描き切った最初で最後のドキュメンタリーが、今ここに解禁される。